社長が企画をスルーする事情
企画が通らない、あのもどかしさ
「せっかく練りに練った企画なのに、社長が首を縦に振ってくれない…」
経営会議のあと、そんなため息をついた経験はありませんか?
「うちの社長は石頭だ!」「うちの会社は風通しが悪い」といった声も、現場からはよく聞こえてきます。
私もこれまで、数多くの組織の現場で似たような場面を見てきました。優れたアイデアが机の引き出しの中や、パソコンのフォルダに眠ったままになるのは、決して珍しいことではありません。しかしながら、そこには感情論だけでは説明できない「理由」があります。
社長が意思決定に慎重になる、あたりまえの理由
まず理解しておきたいのは、社長は会社の最終責任者だということ。
経営の舵を握る者として、軽々しく決断はできません。
しかも社長は常に、全体の方向性を俯瞰しています。金融機関からのプレッシャー、取引先からの賃下げ交渉、競合の台頭・・・。一般社員が得る事がことができない情報も、社長だけには毎日雪崩のように押し寄せてきます。
そんな状況で出された企画が断片的に見えたり、全体戦略との整合性が不明瞭だと、「なんだこれは!」と感じるのも無理はありません。
さらに人間心理として、部下の案をそのまま採用することに微妙な抵抗を感じるケースもあります。平たく言えば「癪」なのです。これは人情のしからしむところで、「生意気な!」と思ってしまうのも仕方がないでしょう。
しかしながら、そのときは響かなくても、数か月後に『あれ、良いかも』と感じる」――そんなことも珍しくありません。企画立案者が忘れた頃に、あたかも社長が考えたかのように朝礼で新事業として言い出す――。企画立案者からしたらたまったものじゃないでしょう。しかし、社長には決して悪気はありません。忙しさのあまり、企画の残像だけが残り、自分が考えたこととミックスされ、実現化しているだけなのです。
じゃあどうする? 企画を通すための視点
では、私たちはどう動けばいいのでしょうか。
ここで大事なのは、「社長が見ている景色」を理解することです。
1. 全体戦略との接続を示す
社長は部分ではなく全体を見ています。企画が会社の長期ビジョンにどう貢献するかを明確に伝えましょう。
2. リスクと対策をセットで出す
「うまくいったら」の話だけではなく、「失敗したらどうするか」まで示すことで安心感を与えます。
3. 時間差のアプローチを想定する
一度で通らなくても、改めて提案する前提で準備する。社長の頭に残れば、後で芽が出ることもあります。
大事な「No.2」の役割
そういった複雑な社長の心理を翻訳し、解きほぐして現場に伝えるのは、No.2と呼ばれるポジションの方。併せて各部署の管理職と連携して事業を回していく必要があります。企画立案者の功に報いるのも彼らの仕事。「会社は今このような状況。こんな企画、こんな方向性で考えて欲しい」と従業員に落とし込んでいくことが重要になります。
ポイントは「会社全体のストーリー」を踏まえた上で提案を磨き続けること。さらに「社長の心理」を踏まえた上で、適切なタイミングを見計らって提案する。これが、組織内の意思決定を動かす現実的な方法です。
まとめ ―「相談したい!」の一歩へ
企画が通らない背景には、必ず理由があります。
社長が石頭だから、ではなく、その立場ゆえの慎重さと責任感を理解すること。
そこから、企画の見せ方やタイミングを変えるだけで、結果は大きく変わります。
もし、社長の視点を踏まえた効果的な提案や組織内の意思決定プロセス改善に関心があれば、ぜひご相談ください。現場と経営をつなぐアプローチで、あなたの企画が日の目を見るお手伝いをします。